かつての浦和市・大宮市・与野市・岩槻市が合併したさいたま市は都心から20~35km圏内に位置する、いわゆるベッドタウン。さいたま市自体も人口130万人弱の政令指定都市であり、人口集中地区でもあります。
都心へのアクセスが便利なエリアを除けば、田畑や丘陵地帯も多く、土地活用ではエリア特性を十分に調査・検討する必要があります。
例えば、賃貸住宅だと川口市などより都心に近いエリアの駅近物件ならまだ希望が持てますが、そうでない場合、単身者需要は減りますし、ファミリー向け物件だと分譲マンションや戸建て住宅との競合となり、低金利時代の今は分譲物件の方が優位に見えます。
高齢者施設ならさいたま市だけでなくある程度の人口規模がある川口市・越谷市・春日部市なども含めて、駅や中心街の周辺立地でなくても一定レベルの需要が見込めると思います。エリア単位での公共交通機関が利用しやすい立地であれば、高齢者施設はあまり立地条件に左右されないので、賃貸住宅や商業施設だと収益が見込めない土地でも、十分可能性があるでしょう。
全国の有料老人ホーム情報を集めている専門サイト『有料老人ホーム情報館』で、全国都道府県及びその市区町村別に登録されている施設数のデータが公開されています。そこから埼玉県に関するデータをピックアップしてみましょう。
引用元/有料老人ホーム情報館|老人ホーム 都道府県別ランキング(2017年1月現在、有料老人ホーム情報館に登録している施設のデータを集計)
https://www.roujin-homes.jp/ranking/chiki/
以下は埼玉県内の市区町村別で高齢者施設が多い上位5地区となります。
引用元/有料老人ホーム情報館|老人ホーム 都道府県市区町村ランキング(2017年1月現在、有料老人ホーム情報館に登録している施設のデータを集計)
https://www.roujin-homes.jp/ranking/shiku/
『遊休地バンク』という遊休地の土地情報を検索できる専門サイトで、埼玉県の遊休地について調べた結果を以下に紹介します。情報は2018年8月10日現在となります。
土地面積 | 地目 |
---|---|
842.00㎡/254.38坪 | 畑 |
875.00㎡/264.35坪 | 田 |
2900.00㎡/76.13坪 | 畑 |
496.50㎡/50.00坪 | 宅地 |
28099.17㎡/500.00坪 | 山林 |
引用元/遊休地バンク|埼玉県
http://xn--xoqv1r613c.com/land/?pref=%E5%9F%BC%E7%8E%89%E7%9C%8C
土地活用の方法には、高齢者向け施設の建設のほかにも、マンションやアパート、商業ビルなどの建設など、さまざまなものがあります。いずれの土地活用にも一長一短があり、どれが一番良いか、ということを語ることはできません。
以上を前提に、埼玉で高齢者向け住宅を建てることの優位性を考察してみましょう。
土地の活用法として真っ先に浮かぶのが、マンションの建設でしょう。1棟に丸ごと投資をすれば、ワンルームなどの区分所有に比べ、空室リスクを分散させることができます。土地活用の有効な手段の一つと考えて良いでしょう。
その一方で、マンションの利回りは立地に大きく左右されます。近年、政府の政策とは正反対に、東京への人口一極集中が加速中です。首都圏と地方との収入格差も拡大傾向にあることから、今後もますます東京圏への人口流入は続いていくことでしょう。
東京圏で、かつ立地の良い場所に土地を持つ方ならば、マンションでの活用を検討してみても良いかも知れません。
利回りが高めと言われるマンション建設よりも、さらに高い利回りが期待できるのが商業施設での土地活用。住宅よりも割高な家賃相場に加え、テナントのビジネス如何によっては、安定的な高収益が期待できる土地活用法と言って良いでしょう。
ただし、いかなる土地活用法・投資法であれ、想定利回りの高さとリスクの高さは比例します。1つのテナントが退去したときの商業施設の減収率は、1戸の世帯が退去したときにおけるマンションの減収率の比ではありません。加えて、立地が悪ければ、そもそもテナントが入居しない可能性すらあります。
人が多く往来する場所や、大きな国道沿いに土地をお持ちの方であれば、商業施設での土地活用法も検討してみて良いでしょう。
これまでトランクルームに一切無縁だった方には理解しがたいかも知れませんが、トランクルームの需要は非常に高いと考えてください。現状、需要に対して供給が追い付いていません。
住宅や商業施設と比べれば、初期投資費用が圧倒的に低め。加えて、トランクルームの用途はモノを置くだけなので、土地の陽当りや周辺環境による収益への影響も低いと考えられます。
一方で、建築基準法が定める用途地域に適合するかどうか、という問題もあります。もとより、人が多く住んでいない地方の土地にトランクルームを設けたところで、利用者には限界があるでしょう。
供給が追い付いていないという状況ではあるものの、マンションや商業施設と同様に、立地という条件を無視して投資するには、あまりに危険です。
マンション、商業施設、トランクルーム。いずれの土地活用法でも、東京圏や大きな国道沿い、人が多く住む場所など立地の条件が良好であれば、高い利回りが期待できます。逆に言えば、立地の条件が不良であれば、土地活用に失敗する確率が高くなるでしょう。
一方で高齢者施設は、初期投資額は高いものの、立地による影響が出にくい土地活用法です。人があまり住んでいない地方では、高齢者施設が一番賑やかで活気があります。「立地にはあまり自信がないが、できる限り長期的・安定的・低リスクな土地活用をしたい」とお考えの方には、高齢者施設が適していると言えるでしょう。
少子高齢化が進む県内において、今後、これ以上のマンションや商業ビルのニーズが伸びるかどうかは、定かではありません。一方で、高齢者向け施設のニーズは、長期的・安定的に伸び続けることが容易に予想されます。安定収入を見込める点は、高齢者向け施設の大きなメリットです。
詳しくは後述しますが、埼玉県内では急速な勢いで高齢者人口が増えています。そのような社会背景において、高齢者向け住宅の建設自体が、地域への社会貢献となることでしょう。利回りを得ながら社会貢献をできることに、投資家は大きなやりがいを感じるはずです。
高齢者向け施設を一棟まるごと建設するためには、土地代も含めて億単位の資金が必要となります。マンションの区分所有などとは異なり、多くの人にとって、気軽に始められる土地活用とは言えません。
商業ビルやマンションなどと比べると、高齢者向け施設は、やや特殊な設計・仕様となっています。よって将来、何らかの理由で土地の売却を検討することになったとき、建物ごとの転売には苦労することが予想されます。
日本では、75歳から急激に要介護状態になる人が増えると言われています。高齢者向け施設への入居年齢も、おおむね75歳前後と推測されます。そこで、今後の高齢者向け住宅へのニーズを予想するため、2018年現在までの埼玉県における75歳人口の推移を確認してみましょう。
1982年 | 1986年 | 1990年 | 1994年 | 1998年 |
---|---|---|---|---|
13198人 | 19752人 | 24388人 | 24504人 | 30105人 |
2002年 | 2006年 | 2010年 | 2014年 | 2018年 |
---|---|---|---|---|
40632人 | 47599人 | 57942人 | 68260人 | 91066人 |
※埼玉県公式HP「年齢構成等時系列データ」より(https://www.pref.saitama.lg.jp/a0206/a009/age.html)
1982年に13,000人ほどだった県内の75歳は、2018年までの36年間で、約7倍の91,000人まで増加しています。わずか12年前の2006年と比較しても、約2倍という著しい増加率です。
ちなみに、人口が激増するとされる団塊世代は、2018年時点で69~71歳。上記の表の「2018年」の欄には、まだ加算されていません。同じ程度の人口とされる団塊ジュニア世代は、2018年の時点で44~47歳です。
医療の進歩とともに平均寿命の延びも予想されている中、埼玉における高齢者向け住宅のニーズは、今後ますます増え、かつ、長期的に続いていくことが予想されます。
まず自治体のホームページ等で、有料老人ホームに関する情報を確認してみるといいでしょう。
サ高住、介護付きや住宅型などに関する様々な情報が掲載されています。例えば、国の有料老人ホーム標準指導指針の改正に対応した埼玉県の同指針を提示することで、施設として満たすべき内容を確認できたり、埼玉県への届け出関係資料が確認できたりましす。
また埼玉県では、運用事業者向けに公益社団法人有料老人ホーム協会の主催で、「有料老人ホーム なんでも相談会」を開催しています。運用時に発生してくる施設起因の課題などは、施設建設にも関わってくるので、関係してくる内容を事前に確認しておくにはとても良い機会となります。他にも、同じく運営事業者向けに、公益社団法人有料老人ホーム協会の主催で、「経営戦略講座」も開催しています。PwCコンサルティング合同会社も入っての講座なので、有意義であることは間違いないでしょう。それぞれ、気になる方はお問合せや参加などをされてみてはいかがでしょうか。
どの業者に相談して、依頼するかはもちろんですが、その後の運用も見据えた建設としなければなりません。
ですがそこまで心配しなくても、高齢者施設建設事業に取り組んでいる建設会社は、施設建設に留まらず、高齢者施設の運用を主事業としている専任事業者との仲介もしてくれる企業も多くあります。特に地元エリアで実績の多い建設会社であれば、その傾向も顕著です。
また、建設会社のなかには、高齢者施設建設事業だけに特化した企業もあるので、土地選定から施設建設、その後の運用までと一貫して対応してくれることから、途中工程の多さによる煩わしさに抵抗を感じる人にも、予想していた以上に高齢者施設の建設運用に対する選択肢が多くあることが分かるでしょう。
このことから、地元に強い基盤がある建設会社に仲介も含めて相談してみることをおすすめします。
埼玉県でおすすめできる建設会社を、下記にまとめましたので参考にしてみてください。
埼玉県を対応エリアとしていて、高齢者施設建築でおすすめできる専門会社を3社、ピックアップしてみました。
現在、グループ企業として活動していますが、そのルーツとなる横尾材木店は大正15年の創業で、地元の本庄市では材木商として100年近い歴史を誇る老舗企業。
注文住宅から商工業施設まで多様な建築実績を持っていますし、近年は自社で高齢者施設の運営も手掛け、十分なノウハウを蓄積。高齢者施設の建築費では大手企業より20~30%安価に対応できるのも魅力です。
施設名称:住宅型有料老人ホーム(美咲郷)
引用元:ワイビルド公式HP(https://ybuild-honjo.jp/example.html)
本社は本庄市で深谷市と坂戸市にも店舗を展開する埼玉県の地元密着型企業といえます。活動エリアは埼玉県と群馬県が中心で、賃貸住宅や各種施設などの施工は約6,000戸と豊富な実績を持っています。
土地活用のコンサルティングでは多種多様な提案が可能ですし、取扱商品のラインナップは一般住宅から商工業施設、そして太陽光発電システムまで揃っています。
施設名称:介護付有料老人ホーム(あんしんホーム東松山)
引用元:渋沢公式HP(https://www.e-shibusawa.jp/gallery/elderness.html)
川口市に本社があり40年以上の歴史がある地元密着型建築会社。同社所属の埼和グループ全体ではブレインマンションというシリーズを展開、施工実績は全国で1,030棟の規模となります。
埼和興産は埼玉県南部に強く、医療施設や福祉施設は新築だけでなくリノベーションにも対応。オーナーへの柔軟性ある対応などに定評があります。
施設名称:サービス付高齢者向け住宅
引用元:埼和興産公式HP(http://www.saiwa.co.jp/work/care_institution.html)